ひさびさに映画を見てきたんだけど、
これがかなり残念な出来。
原作のエピソードがアレコレ削られてたり編集されてたりってのは
まぁ時間の制限とかもあるだろうし仕方ないと思うんだけど、
内容として2chに書き込まれた内容よりもクォリティ低く映画化して
一体誰が得をするのかと。
というより、別物だよアレは。
役者さんたちは頑張ってたと思う。
小池徹平のストレートな演技は好感を受けたし、
田辺誠一も非常に役柄にあってた。
品川が嫌いって人も多いみたいだけど(俺も別に好きではないけど)
あれも嫌われ者の役柄を上手いこと演じてたと思う。
問題は2点。
ひとつは製作側のIT業界だとかブラック会社だとかに対する
認識がズレてるってこと。
あれなら別にIT業界の話にする必要はない。
どんな仕事だって現場に嫌なやつくらいいるし、
理不尽なこともたくさんある。
土方でも営業でも販売店でも充分成り立つ話。
究極、俺なら初日に品川ボコって終わり。
IT業界の仕事ってのは、
例えるなら密閉されたジップロックの中に閉じ込められて、
どんどん酸素が薄くなってく中で延々と
手元の専門用語満載のメモ書きを
コンピュータに理解できるように翻訳し続ける作業。
映画のように、バリバリと仕事に体当たりをしていくワケではない。
(仕事内容が翻訳だからね。急いだら早くなるというものじゃない。)
映画みたいに誰かに怒鳴ったりなんかしない。
いや、余裕があるときは怒鳴ったりもするけど。
究極追い詰められると、イライラを越えて、諦めの境地に陥るのだ。
密閉されたジップロックの中で酸素を吸って二酸化炭素を履き続けるもんだから、
酸素が足りないのよ。無駄な酸素使ってらんない。
全員が全員そんな感じ。
明確に誰が悪いなんて目に見えることは普通ないわけよ。
皆揃って黙々と、地味に、延々と真綿で首を絞められ続ける。
皆苦しんでるもんだから、誰が悪いのかも誰が得してるのかも見えないワケよ。
そして、酸素が頭にまわんなくなって、手元の文字が読み込めなくなる。
そうなった時は最悪。
やらなければならない、翻訳しないといけないのだ。
文字は自分に理解できる言語で書かれているのだ。
まともな頭脳の状態であればできるのだ。
しかし、日本語がもはや理解できない。
周りの人は黙々と苦しみつつも頑張っているのに。
俺の頑張りが足りないのか?俺は駄目な人間なのか?
ITやっておかしくなる人間のプロセスは大体こんなもの。
まぁしょうがないのかね。作った人はITの人じゃないんだし。
ちゃんと取材くらいしろよ、とか。
イメージだけでモノ書いてんじゃねーよボケがとか言いたいことは山盛りあるけども。
んでもうひとつ。
コレが一番駄目。
上に書いたような認識のズレから発してるもんか、
意図してそうしたのかはわからないけど。
ストーリーを通しての主題が原作とズレているように感じる。
原作では、(あくまで俺の受け取った内容は)
「仕事ってなんだ、働くってなんだ、と色々な葛藤があるけども、
それぞれに働く理由があって、人と人の繋がりが、
働く上で自分を支えてくれる足場になる」
という内容だったと思う。
映画は。
なんじゃありゃ。
「ブラック企業なんてのは当たり前だ。
それが耐えられないのならニートに戻ればいいじゃない。
皆頑張って働いてんだよ。オマエも頑張れ」
って内容になっている。
ふざけんな、と言いたい。
ITでくたばってる人間はとっくに頑張ってんだよ。
日本語すら読めない状態の人間にどう頑張れと。
そんなに人を追い詰めたいのかね。
そんなわけで。
俺にとってのこの映画は
「ブラックITへの無理解から始まって、
見る者に見当ハズレなアドバイスを投げつけて
悦に浸ってるクソ映画」
でした。
取材をしっかりやって原作をしっかり読んだら
あんな出来になるはずはないと思うんだけど。
製作した人間が勘違いして読み込んで、
そのまま勘違いしてよく似た別物を作っちゃったってことかな。
原作(小説は知らないけど2chスレの書き込みの方)は素晴らしいです。
面白かった。
映画を見て、勇気付けられたとかそういう人がいるなら
それはそれで文句つける気はないんだけど、
アレを見て、本当にブラック企業の中でくたばってる人間に
見当ハズレなアドバイスをする人が出てこないことを祈ります。
以上。
原作はこちら。
http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-217.html